ICTを使った英語教育

ICTで自習の質が高まれば、対面レッスンの質も変わる

1962年の創業以来、ECCは母語以外の言語教育に携わってきました。これまで取り組んできた対面レッスンや、インターネットを活用したオンラインレッスンに加えて、新たにICTを活用した語学学習の為の技術を使った新たな学習方法を展開するため、2015年にECC ICT教育技術研究所を設立しています。

私たちがICTの活用でめざしているのは、英語を話す環境づくりや遊ぶように学べる英語学習です。また、学校教育の中で今後求められる「“人”だけではできなかった方法での学習」や「教員によるバラつきの削減」、さらにメリットの大きい「時間と場所に縛られない学び」にも対応していきたいと考えています。これらを実現するため、人工知能や音声認識などの最先端技術と、創業以来長年にわたり培ってきたECCの言語教育ノウハウをかけ合わせ、ECCならではのICTによる新しい学習スタイルを作っていきたいと思います。

日本人の英語学習の課題は、発話量の少なさと継続の難しさ

英語を話せるようになるには、何よりもまず十分な会話練習量(発話量)が必要です。しかし、日本国内に住んでいる限り、ふだんの生活の中で英語を話す機会は決して多くはありません。たとえば学校の英語の授業でも、一人の教員が30人近くもの生徒を指導するとなると、一人あたりの発話量はほんのわずか。話さないからいつまでたっても話せない、という状況に陥りがちです。

また、英会話の習得には不断の努力が必要で、学校の授業や英会話スクールでのレッスンのほかにも、毎日の自習が欠かせません。しかしこの自習は、モチベーションを維持し続けることが難しく挫折しがちです。いつでも気軽に取り組めるものでなければ継続できないのが実状です。

ICTの活用で自習が変わる!語彙の定着と会話練習が可能に

ICTを活用して効果的に実施できる自習は、大きく2つあります。一つ目は、単語や文法などの反復練習です。この習得は一朝一夕にはいきませんが、ICTを使えば、楽しみながら反復練習でき、効率よく定着させることができます。二つ目は、音声認識を使った会話練習です。音声認識技術を使うことにより、相手がいないときでも会話練習が可能となります。

ICTを使って自習の質を高めることができれば、実はそれが、対面での授業の質を高めることにもつながります。これまで対面レッスンの中で行っていた単語や文法、定型文の口頭練習などは自習で完結できるようになります。となれば肝心の対面レッスンでは、型通りの会話ではなく、どんな話に発展するかわからない筋書きのない「生の会話」の練習に時間を使えるようになるのです。

ECCのノウハウが詰まった英会話アプリ「おもてなCity®へようこそ!」を開発

英語学習の課題を解決するため、ECCの語学学習ノウハウと新しいテクノロジーとを融合させて開発した英会話シミュレーションアプリが「おもてなCity®へようこそ!」です。外国人観光客への「おもてなし」をテーマにして、多様なシチュエーションでキャラクターと会話の練習ができます。また、単語や文法の学習もゲーム要素を取り入れ、楽しみながら繰り返すことでスムーズな定着も図れます。

このアプリは、新学習指導要領にも準拠しており、小学校・中学校の授業でも活用しやすいように設計されています。さらに、教員は管理画面で児童・生徒の学習状況や学習結果を把握でき、一人ひとりの習熟度や伸長度に合わせて個別の指導ができるシステムも搭載しています。

ECC独自の語学学習用音声認識モデル

英会話シミュレーションアプリ「おもてなCity®へようこそ!」に詰め込まれた技術の中でも特に独自性が高いのが、語学学習に適した音声認識モデルです。現在、世の中で活用されている音声認識技術は、通常、母語での利用を想定しているため、英語学習初心者の「日本語音素で構成された」発音を認識することは得意ではありません。

しかし、私たちがアプリを使って実現したいことは「たくさん話す」ことなのです。正確な文法や正しい発音よりも、まずは「間違ってもよいから、幅広い内容について量的に十分話す経験を積む」ことです。とするならば、学習者の発音や文法に多少の難はあっても、アプリがその「不確かさや曖昧さ」をくみ取って英語とみなし、続けて問いかけて会話として成立させる、そのバランスが必要でした。そこで、初級・中級・上級のさまざまな段階の英語学習者の発音をAIに学習させ、発話者の習熟度に応じ適切な認識をして会話できる語学学習アプリを開発しました。これにより英語学習初心者からアプリを使った会話練習が可能になったのです。

教育の現場で次々と導入される「おもてなCity®へようこそ!」

2020年4月からは、小学校での英語学習が必修化されました。3・4年生で外国語活動が始まり、5・6年生になると英語は教科になります。同時に、学校に適切なICT環境を整備する「GIGAスクール構想」によって、1人1台のタブレット端末が用意される学校も増加しています。そうした環境変化もあって、いま多くの学校から「おもてなCity®へようこそ!」を導入したいというお声をいただいています。

英語学習が必修化される前の2018年4月には全国に先駆けて、奈良県の私立小学校で実証実験を行いました。実証実験の結果、発話量が大きく増加し英語学習の成果が得られ、正式に授業への導入が決定しました。現在、日本各地の教育委員会、公立小学校でも実証実験が行われており、順次導入も進んでいます。

広い世界へ羽ばたく土台づくりのためのICT活用

英会話シミュレーションアプリ「おもてなCity®へようこそ!」は、まるで自動車の走行を体験するドライビングシミュレーターのように、練習の場を提供するには最適のツールです。このICTでの学習を土台として、学習者が上達するよろこびや学ぶよろこびを知り、そのよろこびを原動力としてそれぞれの道へ進み、やがては世界へ羽ばたいていく。そんな日が来ることを楽しみにしています。